1.21のゆめ
薄炭タクヤという少年に会った。夢のなかで。
夢の中で私と彼らは既に知り合いで、
薄炭と書いて”すずみ”と読むことも知っていたけれど、
下の名前の字は知らない。
彼は少し茶色がかった猫っ毛で、細い吊り目をしていて、
どこにでもいそうな少し軽い感じの少年だったけれど、
私の作ったアップルパイをとても美味しそうに食べてくれた。
皮が硬いとか、少し文句を言いながら。
私たちはどうやら、何かの試験を受けている最中だったようで、
私も、どんな内容だったかはさっぱり覚えていないけれど、
とても緊張しながら試験を受けた記憶だけはあった。
そして私は、男子二人とわたしともうひとりの、私と友達関係であろう女の子の、よくある仲良し4人グループでそれぞれ別の試験を受けていたことも覚えている。
私たちが何かの試験を受けている最中に、世界の終わりまでもうすぐになってしまって、
どうにか食い止めようとしてわたしは何故かアップルパイをつくっていて、他の子たちはどうしようかと悩んだり、
世界を救いに出かける準備をしたりしていて、
にわかにどこかから出てきた動物たちが、必死に世界を救おうとしていた。
みんながせわしなく動いているなか、薄炭君ともうひとりの女の子は、
わたしのつくったアップルパイを楽しみに待っていてくれた。
アップルパイを食べ終わると、
世界の終わりまでもうあとわずかになってしまっていて、
頑張っていた動物たちが帰ってきたりしたので、私たちも家へ帰ることにした。
「世界の終わりが近いから、もう家へ帰ろうか。」
薄炭君はそう言うとそそくさと帰り支度を初めて、私ともうひとりの女の子は、その5歩くらい後ろを歩いて帰った。3人は途中まで道が同じようだ。
あとひとりいたはずの男の子は、どこへいったか知らない。
帰り道の途中、一緒に歩いていたその女の子は、私にだけ聞こえる声で
「薄炭じゃない方のタクヤのせいでわたし多分落ちてるなぁ」とぼやいていた。
彼女によればもうひとりのタクヤは彼女の受験を応援するのに
必死で扇子であおいだらしく、
その風によって彼女にの試験には大切な火がゆらいでしまい、
とてもやりずらかったという。
薄炭じゃない方のタクヤというと、2人会った男の子のうち、
あともうひとりは明らかにキムタクの顔をしていたので、たぶん彼なのだろう。
そうか、きょう合ったふたりは二人ともタクヤという名前だったのか、と
そこで気付く。
帰り道は暗くて深い森の中のようだったけれど、不思議と怖くはなかった。
そして途中で、まるでジブリ映画に出てきそうな、石で出来た、
ところどころにくぼみがあってそこにときたま水がたまっているような、
小さな小道を見つけて、私はとてもテンションがあがった。
すぐさま持っていたiPhoneで写真を撮ろうとしたのだけれど、
どうせまた通る道だし、世界の終わりも近いのに、
そんなことしてる場合じゃないな、と思って、写真をとるのをやめた。
そこで目が覚めた。私は写真くらいとっておけばよかったと、とても後悔した。
薄炭君は無事に世界の終わりをむかえられただろうか。